及川敦子建築設計室

theme 設計の考え方

1. ゆとり

Room

ゆとり

住宅という場所には、日常生活に必要な物や行為のほか、そこに住む方のさまざまな想いや思考まで、多種多様な物事が集まるものではないでしょうか。物も人の精神も、ニュートラルな状態を保つには場の力が助けになりますし、建築空間にはそういった使命があると私は考えています。一定量以上の空気の量、たっぷりとしたボリュームが、住む方々の気持ちを穏やかに保ちやすくしてくれるようです。
空間の中には「余白」を残しておく。吹き抜けとして実現したり、廊下の幅を少し広めにする、平面に余裕が無い場合は壁の広がりを残す…物や行為によって埋め尽くされないゆとりをつくること。人間には、沢山のゆとりが必要だと考えます。
空間の余裕は、人間関係を柔らかにしますし、もう一つ使い方を決めすぎないという意味合いもあります。建て主が住み始めた後、アレンジができる余裕は、生活の楽しみにも繋がります。

2. 屋内環境

Keep an Exellent Indoor Environment

屋内環境

屋根の庇(ひさし)はできるだけ出したいと考えています。夏季の日射を遮ることができ、雨風による外壁の汚れも抑えることができます。建物の外皮(床壁天井)の断熱性能を上げ、自然通風を得られるよう開口部や吹抜けを設けることを基本に、屋内環境をデザインします。冬季は日射を取り入れ、夏季は輻射熱や日射を減らす。わたしは北国育ちで、断熱性能が不足した家屋の中で冷暖房機器に頼る生活環境に大変抵抗があります。エネルギーを無為に漏らす不合理を解決すれば、ランニングコストと屋内環境の温熱的なクオリティが改善します。冷暖房機器の効果を十分に引き出すためにも、温熱的に屋内環境を穏やかにコントロールするデザインが欠かせません。

3. 風景をつくる建築

Landscape

風景をつくる建築

一個の建築には、一度建てられるとその場所に長い期間建ち続け、周りの環境を変えてしまう力があります。敷地の中に建てようとしている建築が、風景をつくる一部であることを念頭に置いて、時には「もし境界線がなかったら?」と想像しながら一つ一つの建築設計にエネルギーを注いでいます。

4. 時間の経過を美しさに変える

Beautiful Passage of Time

時間の経過を美しさに変える

新築のときが一番キレイで、時間がたつほどに汚くなるのは辛いことです。時間の経過も魅力に変える建築を造れないだろうか。そのためには、庇(ひさし)を出して雨掛かりを減らし、外壁の劣化や汚れを抑えること。時間の経過に耐える素材を選ぶことや、手入れが楽しいと感じるように、愛着を持ってつきあい続けられる建築を造ることが大切だと考えます。建築は建ち続けるスパンが長いからこそ、時間が経過するほどに新たな美しさをまとうものでありたいと考え、素材や納まりを検討しています。

5. 近くにある素材を使う

Local Materials

近くにある素材を使う

近くで入手できる素材を使うことを心がけています。
全く輸入材を使わないということではありません。適材適所でバランスの良い選択を提案します。輸送にかかるエネルギーを考えると地球環境への負荷を減らせることはもとより、近くに良い材料があるなら、それを使うのが自然だと思うからです。

6. 意匠と構造と

Architectural design and Constructional design

意匠と構造と

木造のデザインの要点として、意匠デザインと構造デザインが一致することが重要です。
プランニングの際には、光の入り方を考えながら、立体的な3次元の空間として魅力があり、また構造体としても力学的に丈夫である、両者が整合性を持ち一致するプランを探り検討を進めていきます。

7. 収納/キッチン

Storage / Kitchen

収納/キッチン

プランニングをしていて、収納を考えるのは楽しい部分です。物をどこにしまおうか、と考えながら鉛筆を持つ手を動かしていると、プランがふいに生き生きしてくるように感じる時があります。お施主さまとの打ち合わせが密になる話題でもあります。収納もキッチンも、極力造作しています。片付けやすさは、実はそこで暮らす人の幸せに直結する重要事項と考え、十分な収納空間を確保するよう心がけています。

8. 全体としての調和

Harmonious relations of elemants within a whole

全体としての調和

ここまでいくつかのテーマをあげてきましたが、ある部分にこだわったために、周囲に無理が生じる、ということは避けたいと考えています。
建築、特に住宅は全体のバランスが重要です。表舞台のリビングはイメージ通りであるが、舞台裏の水廻りが使いにくい、というのでは住まいとしてアンバランスであることは、想像していただければご理解いただけると思います。
時に頂いた要望が、他の要素と両立せずに苦戦することもありますが、どちらかを切り捨ててしまうのではなく、「調和が得られた」という感覚が得られるまで粘り強く検討し、回答を出そうと心がけています。
また、意匠・構造・設備が絡み合い、図面を実際に形にする過程では沢山の専門職種の方々が協働し造り上げるのが建築です。完成してから目に触れることのない床下に至るまで調和したものでありたいと願い、図面と向き合っています。

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